「明日は試験の日か〜」
「やばいな、数学全然勉強してない」
「マジかよ!今回の範囲半端じゃないぞ!」
「あああ、今日は一夜漬けか…」
数人の高校生が、そんな世間話をしながら俺の横を通り過ぎる。
高校生の歩く場所は普通の横断歩道。
俺が立ち尽くす場所は脇の工事現場。
俺もあんな風に歩きたい。
たわいもない会話をしながら、試験に頭を悩ませたい。
俺はなぜここにいるんだろう。
俺はなぜこんなことをしているんだろう。
ここは俺の家の前だ。
帰りたくない。
俺はそう思いながらも鍵を回し、扉を開く。
すかさず飛んでくる罵声──
そこで俺は目を覚ました。
今朝あの盲目の少女の部屋を出た後、行き場に困った俺はある廃工場の中に忍び込んだ。
ここなら誰も人が来ることはないだろう、そう思い俺は眠りについた。
そして今、傷だらけになった腕時計は午後11時を指していた。
半日以上眠っていたらしい。
昨晩から今朝にかけて、気も休まらないまま町中を走り回っていたから、当然といえば当然か。
こんな孤独な生活がいつまで続くのだろうか。
分かっているのは、まだ始まったばかりだということ。
終わりを迎えるためには代償が大きすぎること。
想像するだけで気が遠くなる。
助けてくれる人は誰もいない。
孤独がこんなについらいものだとは。
──抜け出したい
「真美様、聞いていらっしゃいますか?」
「え?ああっ、はいっ」
「どうも今日は集中力に欠けますね…」
家庭教師の先生、イライラしっぱなしだったな。
しょうがないじゃない、色々なことが頭をめぐってたんだから。
テレビで音楽番組が始まった。
ということは11時30分。
そう。
全ては朝の出来事のせい。
彼は…一輝君は、私に学園生活の話を聞かせてくれた。
授業、友達、休み時間、先生、部活、定期試験…
とっても楽しそうだった。
それに引き換え、私は──
同じ高校生なのに、こんなにも状況が違うなんて。
私がもし高校に通っていたら。
彼と同じように楽しい生活を送れていたのかな。
今は一人もいない、友達がいたのかな。
上辺だけでなく、本当に頼れる先生がいたのかな。
こんな孤独な生活がいつまで続くのだろうか。
分かっているのは、まだ始まったばかりだということ。
終わりを迎えるためには代償が大きすぎること。
想像するだけで気が遠くなる。
助けてくれる人がいないわけじゃない。
だけどこんなに孤独なのはどうしてだろう。
──抜け出したい
コツコツ
コツコツ
窓のほうから音がした。
静かに窓が開く。
「…じゃまするぞ」
「…いらっしゃい」
孤独の中に住む二人。
その孤独から逃げたいから戻ってくる。
その孤独に耐えられないから待ち続ける。