ここはとある地下室。
6人の男たちが円形のテーブルを囲むようにして椅子に座っている。
K氏はその中の一人だった。
部屋の中の明かりは小さな電球がひとつだけで非常に薄暗い。
男たちの間に会話はなかった。みな何も言わずにうつむいている。
やがて、その部屋に一人の男が入ってきた。
黒いスーツに身を包み、サングラスをかけている。そして手には…拳銃。
黒い男は口を開いた。
「みなさま、ようこそいらっしゃいました。これから、あなた方6人にはロシアンルーレットを行っていただきます。途中でやめることは許されません。」
「それよりも!」
K氏の隣に座っている男が立ち上がり怒鳴った。
「このゲームで生き残れば、10億円が手に入るというのは本当だろうな!?」
男たちはみなそれを目的にここにやってきたのだ。
「ええ、生き残れば、10億円は必ず差し上げます。ただし、もう一度繰り返しますが、途中でやめることはできません。それでは1回戦を始めます。」
拳銃のリボルバーに1発だけ弾が込められた。黒い男は拳銃を机の上に落とした。
「まずはあなたからです。」
その拳銃の銃口が向いた男を指差して言った。
指された男はガタガタと震えながら、拳銃を自分のこめかみに向けた。
そして、声に鳴らない悲鳴を上げて引き金を引く。
カチャッ…弾は出なかった。男は汗だくになって拳銃をテーブルの上に置く。
「次はあなたです。」
次はK氏だった。どうやら、右回りに引き金を引いていくらしい。
K氏もまた、さっきの男と同じように拳銃に指をかけた。
カチャッ…また、外れだった。
K氏は安堵のため息をつくと、隣の男に拳銃を渡した。
パン
静かな地下室に銃声が響き渡った。
「当たりですね。」
黒い男は、頭から血を流す男の手から拳銃をとるとまた弾を込めなおして言った。
「それでは、2回戦を行います。」
次は5人でロシアンルーレットを行う。
順番は、さっき死んだ男の右隣の男からだ。
パン
銃声とともに、4回戦が終わった。K氏は生き残っていた。
テーブルの周りには、4つの死体が転がっている。
どれくらい時間がたったのかは分からない。黒い男がまた5発目の弾を込める。
「では、5回戦を始めます。」
残っているのは後2人、K氏とその向かいに座っていた男。
「あなたからです。」
K氏は拳銃を受け取り、こめかみに向けた。
K氏ももう一人の男も汗だくになっていた。当然のことだ、死ぬ確率は2分の1…
K氏は引き金を引いた。
カチャッ…
セーフ。
もう一人の男は荒々しくK氏から拳銃を奪うと、こめかみに向けすぐに引き金を引いた。
カチャッ…
セーフ。
男は声に鳴らない悲鳴をあげ、K氏に拳銃を渡す。渡したほうの手も受け取ったほうの手もぶるぶると震えている。
カチャッ…
カチャッ…
その後は2人続けてセーフ。引き金を引く回数はあと1回ずつ。弾は1発。
K氏は銃をこめかみに向ける。
「2分の1…2分の1…」
そうボソボソとつぶやき、引き金を引いた。
カチャッ…
セーフだった。
「うあああああああ!!」
もう一人の男が叫び始める。
「イヤだ!イヤだ!」
男は必死で逃げようとする。しかし、黒服の男の後ろについていた2人の男に取り押さえられてしまった。黒い服の男は、その男の手に拳銃を握らせる。
「さあ、引き金を引いてください。」
「イヤだ!イヤだー!」
男は叫び続ける。しかし、抵抗もむなしく、黒い服の男によって引き金は引かれた。
「言ったはずですよ、途中でやめることはできないと。」
「終わった…私は…生き残ったんだ…」
5つの死体を前に、K氏の体から汗と涙が一気に噴出す。そして、10億という莫大な金が手に入ることを喜ぶ。それはたった1人生き残った自分だけのものなのだ。しかし、それを表現する気力はもはや無かった。
黒い服の男はたった今死んだ男の手から拳銃をとり、弾を込めてK氏に渡してこう言った。
「さあ、6回戦を始めましょう。」