A氏は動物アレルギーだった。
ある日、A氏は最近できた大型病院へ行ってみた。
その病院はアレルギー保持者専門の病院だった。
そこにしばらく入院して治療を受け続ければ、どんなアレルギーでも治る。そんな噂を聞いたA氏は早速その病院へ向かった。
自動ドアが開き、中に入る。
中にはたくさんの人が座っていた。医師の話を聞くには相当待ち時間がありそうだ。
A氏は長椅子に腰掛け、隣の人に話しかけた。
「あなたも何かアレルギーを持ってるんですか?」
隣の人は答えた。
「ええ、私は音楽アレルギーなんですよ。」
「音楽アレルギー?」
「はい、音楽を聞くと頭痛がして・・・ひどいときは気を失ってしまうんです。」
「音楽・・・そんなアレルギー症状があったんですか・・・。」
「驚くのも無理ないですよ。この病院には、いろんな場所からいろんなアレルギーを持った人がやってくるのですから。何しろ、アレルギー保持者専門の大型病院なんてほかにないですからね。」
「そのようですね。」
「ほら、あの方を見てください。」
A氏は隣の人が指差す先を見た。男が一人、立っていた。
「あの方もアレルギー保持者なのですか?」
「ええ、そうなんです。」
「たしか、あの方は“椅子”アレルギーです。」
「つまり、椅子に座れないわけですか。」
「そのようです。」
「大変な症状ですね。」
「まだ良いかもしれませんよ。あそこにひとりでうずくまっている方がいるでしょう。」
A氏はその方を見た。
「あの方はどういった症状なのですか?」
「あの方は他人アレルギーです。」
「他人アレルギーといいますと?」
「近くにずっと他人がいるとアレルギーが起こるようです。すれ違ったりとか、瞬間的なものは大丈夫らしいですが。」
「しかし、それでは医者に診てもらえないのではないのですか?」
「会わなければ大丈夫なのですから、会う前に電話などで知り合いになっておくんですよ。」
「なるほど。それにしてもあなたは妙に詳しいですね。」
「実は、少し前にこの病院に研修に来ていたんですよ。」
そのとき、ひとりの男が自動ドアから入ってきた。そして、途端に胸を押さえて苦しみ始めた。
A氏はその男にあわてて近寄って言った。
「苦しんでますよ!助けないと!」
一緒に話していた男も近寄って言った。
「どうしました?大丈夫ですか?」
男の苦しみ方は激しくなる一方だ。
「どうしたんですか!?」
騒ぎを聞きつけた医者が治療室から飛び出してきた。が、男はすでに虫の息だった。
「思い出しました。」
A氏は聞いた。
「何をですか?」
「さっきの男の人は“アレルギー保持者アレルギー”なんです。」
「いろんな症状があるものですね。」
「本当にね。」