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T氏はある仕事をしていた。

それはT氏個人で始めたもので、依頼されたことをする仕事、何でも屋とでも言えば分かるだろうか。

これまでに、様々な仕事をしたことがあった。

迷子になった猫を探したこともあったし、川に落ちた指輪を探したこともあった。

報酬はまちまちであったが、一応安定した生活を送っていた。

ある日、T氏に依頼が来た。電話での依頼で、とりあえず自宅へ来てくれとのことだった。

T氏は言われた住所のところへ向かった。

そこは小さなマンションの一室であり、依頼人と思われる一人の女がいた。

「よくいらっしゃいました。」

女はT氏に腰掛けるよう促した。

「どういったご依頼ですか?」

「まあ、そうあせらずに。」

女はリンゴを一個と、ナイフを取り出した。

「まず、このリンゴの皮をむいていただける?」

なぜこんなことを自分にやらせるのか少し疑問に思った。普通招いたほうがこのぐらいは準備するものではないか。

しかしこれも商売、依頼人に余計なことを言って機嫌を損ね、報酬をもらえなくなってはたまらない。

T氏はそれにしたがった。

やがてむき終わると、女性はそれを食べ始めた。

「どうぞ、おめしあがりになって。」

T氏もリンゴを食べた。そして、食べながら依頼の件についてたずね始めた。

「で、ご依頼の方は?」

「そうね、その前にそこの壷をちょっとそこからあっちの棚の上に移していただける?」

部屋の隅に壷があった。少しひびが入っていたが、別に女性にもてないほど重いわけではない。T氏はまた疑問をもったが、何も聞かずに言われた通りにした。

「そろそろ、依頼の件を・・・」

「分かりました。」

女は押入れを開けた。発泡スチロールの大きな箱があった。

「これを、明日の午後9時にそこの山を越えたところにある川に、橋の上から投げ捨てて欲しいの。」

まさか、死体ではないだろうな。一瞬そんな不安が頭をよぎった。何でも屋のT氏もさすがに犯罪の手伝いなどをする気は無い。

しかし、その不安は無駄なものであった。

その発砲スチロールの中身は普通の大きな氷だった。箱だったらちょうど大人一人くらいがすっぽり入る大きさだ。

「報酬はこれくらいでよろしいかしら?」

女はそばにあった封筒から金を出した。30万円はくだらないだろう。

T氏はこの女がなぜこんな高額で、このような意味の分からないことを頼むのか不思議で仕方なかった。しかし、このような高額の報酬はまたとない。例のごとく、T氏は何も聞かずに依頼を承諾した。

その氷を発泡スチロールの入れ物ごと車に積み込んだ。氷はT氏一人でなんとか運べるくらいの重さだった。

そして、報酬を先に受け取ると依頼人の家を後にした。

 

そしてT氏は言われた通り翌日の夜9時、橋の上から川へ車で向かい、その大きな氷を投げ込んだ。

「これだけでいいのか・・・あの女性は一体何を考えているのだろうか。まったく分からない。まあ、報酬はたっぷり貰ったんだ、別に文句を言う必要もない・・・」

その後、女性と連絡はとれていない。T氏としては報酬を先に貰っていたので別に気にしていなかった。

 

奇妙な依頼から4日後、T氏がテレビを見ているとあの氷を投げ込んだ川が映った。

川の下流で男性の死体が発見されたらしい。

自分は確かに4日前にそこへ行ったが、氷を投げ捨てただけだから、無関係だ。そう思ってそれほど気にもとめていなかった。

しかし、その後のニュースキャスターの言葉でT氏は絶句した。

「死体は長い間水につかっていたため、死亡推定時刻が定かではありませんが、この橋に仕掛けられていた監視カメラに犯人と思われる男が映っています。」

その映像はT氏が氷を川に投げ込むまさにその瞬間であった。しかも、投げ込んだもの、つまりあの氷の塊はうまく車のかげになってしまい、映っていない。映っていたのは川に何かを投げ込むT氏の姿だけであった。

さらに、追い討ちをかけるようにニュースキャスターは続けた。

「被害者の死因は、鈍器のようなもので殴られた後、ナイフで体を刺されていたということです。この凶器と思われるナイフと壷が被害者の自宅から見つかっています。そこには犯人の指紋が残されていました。」

被害者の自宅・・・T氏があの日訪れた場所であった。

T氏はテレビを消した。

やれやれ、面倒なことに巻き込まれてしまった。

あの女、俺をはめやがった。今頃さっさとどこかへ姿をくらましてしまっているだろう。

警察がやってきたらどう説明しよう。自分の指紋、監視カメラに映った何かを川に投げ込む自分の姿。

頼まれてナイフと壷にさわり、氷を川に投げ込んだなど、狂った者の証言にしか聞こえないだろう。

たとえ聞いてくれたとしても、俺が犯人でないと証明する証拠は何も無い。ただの言い訳にしか聞こえまい。

ドアをノックする音が聞こえた。

 

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